17世紀前後の絵画技法の分類

今、上野の西洋美術館でカラバッジョ展が開催されている。日本には2001年に都立庭園美術館でも開催された。この頃、私は、絵画教室に通いだした頃でありカラバッジョに興味を持った。その後、図書館で色々カラバッジョに関する本を読んだ。今回、石鍋真澄編訳になる「カラバッジョ伝記集」を読んだ。この中に当時の美術評論家のカラバッジョに関する評伝があり勉強になった。特に、当時の絵画技法の分類が書かれているのが目に留まり、今日でも十分参考になる技法なので、記録として簡略てきに抜粋した。

美術研究家ジュスティアーニー(1564-1647)によって分類された絵画技法

①    木炭転写、これに彩色することも可能です。

②    他の画家の模写、少しの間見ただけでもできる。より長い間観察しても、方眼をかけたり、なぞったりして制作することもできる。オリジナル作品をよく模倣するために巧みに色彩を使う必要があり勤勉さと経験が要求されます。

③    鉛筆や水彩、アンバー、そしてペンによる素描によって、目に見えるものを模写できることです。この方法は、絵画に精進している者の訓練として有効です。古代彫刻や著名な作家の絵画の模写している場合です。

④    特に頭部を似せて、また肖像の他の要素、全身を描く時には、衣服や手や足、そして釣り合いのとれたポーズを巧みに描いて、特定の人物をうまく表現できることです。

⑤    花やその他の細かい事物を描写できることですが、これには特に二つのことが要求されます。まず、画家はずっと以前から色彩の使い方が巧みでなければなりません。また、いろいろな位置の小さな事物を描き、光の変化を表現することができるように、色彩が生み出す効果を会得しなければなりません。

⑥    遠近法と建築を巧みに描くことです。

⑦    古代遺跡、近くの風景や遠くの風景など、大きな事物を再現できることです。一つは小さな事物を丹念に描くことなく、殴り描きや斑点のような、混乱しているが、しかし正統的な絵画の優れた技巧や闊達さをもって、あらゆる事物を表現するのです。もう一つはどんなものでもあらゆる細部を観察して、最高の丹念さをもって風景を描くことです。ラファエロ、ティツィアーノ等です。

⑧    画家は多くの事物、つまりこうした絵画が由来する、地上や地下で発見された古代絵画を観察することです。物語や寓話に関わりがあることです。巧みに素描し創意が求めるように、大小の人物像を描かなければならないので、色彩の使い方や塗り方が巧みでなければなりません。

⑨    劇場的な素描によって、自然から与えられた物語を描く方法です。戦争や狩猟、その他の動きをもった人間と動物の物語において評価されています。

⑩    素描と彩色の長い経験によって、いかなる手本もなしに自分の想像力、頭部や全身像、完全な物語画や何であれ他の美しく素描され彩色された事物など、想像の中で得たものを絵画に描き出すのです。

⑪    自然の事物を目の前に置いて描く方法です。けれども、単に正確に描いただけでは不十分なことが自覚されています。作品は優れた素描と、巧みな均整の取れた輪郭をもって制作しなければなりません。また、美しく適切な彩色で描かねばなりません。とりわけ、それぞれの部分の色彩に適切な光を与えねばならず、それはくすんだ色彩が粗野でないように心地よさと調和をもって描かねばなりません。さらに、影の部分と光の部分は明瞭にあって、なお、物の色彩を変えることなしに、また絵画のもつ精神を傷つけることなく、眼が明暗の結合に満足するものでなければなりません。ルーベンス等のフランドル人のように巧みに彩色することです。

⑫     全てのなかで最も完璧なものです。上記➉と⑪を結合する、つまり自然の手本を前にして、手本通りに描く方法で、世に知られた第一級の卓越した画家たちがこのように描きます。17世紀前後のカラバッジョ、カラッチ一族、グイド・レーニ等です。