ゴッホ・オンデマンド、中国のアートとビジネス

皆さんは、中国に油絵をビジネスとして製作している村があるということをご存知ですか。私は、以前、テレビか新聞か週刊紙かで知ったことがありました。浦安市図書館の新刊書リストを見ていると標記図書があり借りて読みました。しかし、これは、400頁ぐらいあり、かつ著者が学問として、この村を観察しているので、内容はかなり専門的であり難しく、私も、関心のある章のみピックアップして読むことにした。要約すると

①この香港近くの深セン(中国漢字がないので)地区の大芬村は香港返還前は人口300人ぐらいの小さなむらであったが、返還後、絵画村として発展すると全国から絵の職人が集まり、今は約8千人の画工が住んで人口も約3万人になっているという。

②製作される絵画は複製画で著作権が切れた50年前の絵を描いており、原則として署名をしない。当然贋作疑いをもたれないように、署名をしても、画工の署名であり、この署名も時には、実際絵を描かない家族の署名を一人の署名専門員が行うということもあるようである。

③しかし、絵の完成度は極めて高く、かつ、単価も安いので、世界的に人気があり、世界の複製画の約6割を占めているという。時には100万枚単位で米国、ヨーロッパから発注があるという。我々が、ヨーロッパ旅行でホテルで見る絵画がこの中国製が多いとのことである。一枚を2-3時間で完成するという熟練工が多いとのことである。

④この村には画家もいる。しかし、この画家は中国というかこの村の独特な階級のようである。市の公募展に3回入選した者に与えられ、マンションにも安く入居できる特典がある。現在。143名いるようである。他の者は職人としての画工であり、この画家の工房で弟子となったり、会社の専属になっているようである。そういえば、ルネッサンス時代にも、ラファーエロやボッチェチェリも工房をもち弟子と共に絵画制作を行い、監修し、彼の名前で署名していたようである。

⑤まさに、この村は産業で言えば自動車の下請け工場のように、絵画制作工場が集まった村である。世界からこの村を訪れる観光客も多く、ツアーもあるようである。私も行って見たいツアーである。

ゴッホ・オンデマンド

2-3年前にNHKの特集番組で、この村が「世界一の油絵村」として放映されており、現在、YouTubeで見ることができるのでご紹介したい。   (前田 記)

世界一の油絵村